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このために食材もバラエティで、 酒の肴にふさわしい安くてうまいものに事欠かない。 季節感たっぷりの脇役たちが、 秋田の酒の味を一段と引き立て、われわれをたのしませてくれる。 Sea, mountains, plains and rivers... Akita is full of a variety of nature and has various, rich foods suitable for sake drinking. These garnishes, with an abundant sense of the season, bring out the taste of sake. |
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酒の肴、といった時に、一体どういうものを想い浮かべるだろうか。 ハッキリした定義があるわけではないから、多少の幅はあるにしても、大げさな料理ではなく、小体(こてい)で、むしろ質素なものを連想する。もっとも、バブル以降もまだ一部で隆盛を極めている都会の高級居酒屋やカフェバーと称するところでは、手の込んだ国籍不明の珍味佳肴が饗されていると聞くが、これは本流とは言えない。 良い肴とは、あくまでも酒の味を損なわず、しかも結果的には酒のうまさを倍加させるという、重要な役割を負っている。 先に、小体で質素といったが、これは言葉のアヤで、それぞれの土地に産する安くてうまい旬の食材というものは、見かけを超越したパワーを秘めている。同じ名前がついている魚や野菜が、どうしてこんなに異なる味や香り、舌ざわり、歯ごたえをもつのかショックを受けつつ、かつまたそれを享受する喜びを体験したことがある。 こうした体験を通して学んだことは、新鮮な食材 ![]() しかしながら、人はいつも恵まれた環境で酒を飲み、肴を選ぶ立場にないことも多い。はやり唄にもあったように「(肴は)あぶったスルメがあればいい」と感ずる時もあり、事実それはまちがった選択ではないだろう。 ここで思い出すのが、『御馳走帖』という本のことである。御存知百鬼園先生こと内田百聞の随筆の中から、食に関するものを選んで収録したアンソロジーである。この中に、「餓鬼道肴蔬目録」というものが収められている。戦争中の昭和19年、段々に食べる物も無くなり人びとの間に危機感が強まっていった頃、勤務先の日本郵船の自室で、思い浮かぶままにしたためたとある。 いくつかを抜き書きしてみよう(表記は今日風に書き改める)。 ![]() この目録は、とくに酒の肴を意識したものではなく、くだもの、菓子をはじめ、そば、うどん、鮨などいわゆる食べ物一般に及んでいるのだが、毎晩酒肴をととのえ、卓上を賑やかにするのが習わしの百聞先生にとっては、勢い酒の肴風が目白押しだ。 ここにあげたもののうち、トロや松茸は今や超高級品となってしまったが、戦前においては一般家庭でもふつうに口にしていたものである。 百聞と同時代の人に北大路魯山人がいる。陶芸の他に、「料理は芸術なり」と主張し、食の道を極めたことで知られる。金に糸目をつけず、全国から食材を集め、料理人を選りすぐり、自ら料理屋を経営した。いつも借金をしていた百聞先生とは、この点大いに開きがある。しかしながら、いつもうまいものを食べたい、という一点においてはなんら変わるところではない。その方法論と実践において、いささか趣が異なるだけの話である。 金に糸目をつけず、全国から食材を集められる人、またそのようなものが提供される高級店に出入りする人を羨まなくとも、たとえば秋田駅の近くにある公設市場をのぞいてみれば、じつに豊かな食材が手頃な価格で手に入ることを知る。羨むべきは、こうした環境にあるということだ。 近頃、地の食材を見直そうという気運が高まりつつある。金沢では絶滅しかかっていた32種の野菜が復活し、大いに人気を博しているという。とくに野菜の中には、かなり個性の強いものがあり、次第にありふれた、ある意味で口当たりのよいものが量産されるに従い、地のものは入手しにくくなった。しかし、食は文化であることを考えれば、こうした土着の食材がいずれ復権することは必然で、大いに慶賀すべきことであろう。 秋田の市場をのぞいてみれば、このような地着きの食材が所狭しと並んでいる。秋田の酒にふさわしい酒の肴が、こうした食材であることは言うまでもない。 |
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