ヨーロッパ

 温泉は世界の至る所にあるが、温泉とのかかわり方、すなわち温泉の文化は地域によって相当に異なっている。たとえば、ヨーロッパでは飲泉が主流で、われわれが思い浮かべるような浴場施設がないところさえある。あっても味もそっけもない四角いプールのようなものか、あるいは家庭用のバスタブがポツンと置いてあるだけ、ということもある。


モザイク壁画に描かれた古代の泉

 こうしたところでは、医師の指示に従って一定量の鉱泉水を飲んだり、決められた時間だけ湯につかり、シャワーを浴びながらマッサージを受けたりするのである。つまりヨーロッパの温泉は、基本的には病気の治療やリハビリを行なう「湯治場」なのだ。したがって温泉療養はれっきとした医療行為として認められ、保険も適用される。また施設は男女別にはなっておらず、浴場は混浴で水着着用が一般的である。

 こうしてみると、たっぷりした湯につかりながら自然の移ろいや宿の雰囲気、料理といったものを楽しむ現在の日本的温泉観とは、かなりの相違があるのが分かる。しかしこうした違いも、その歴史を知ればおのずと納得できよう。