ドイツ

 ドイツには、旧西ドイツだけでも約250の温泉がある。とりわけ有名なバーデン・バーデンは、ヨーロッパきっての高級保養地である。 温泉を意味する「バーデン」をダブらせた地名は、さしずめ「湯の中の湯」といった意味合いであろう。

 バーデン・バーデンはフランクフルトから南へ180キロ、広大な「黒い森」の北端に位置する。 オース川の渓谷に開けた古い町で、その起源は古代ローマ時代にさかのぼる。約二千年前、 北上したローマ軍が20個所の源泉を発見し、壮麗な浴場をつくった。中世の町並みを残す旧市街の中心部、 マルクト・プラッツ(市場広場)とペテロ・パウロ教会堂の下には浴場遺跡が眠っている。


バーデン・バーデンの中心部、マルクト・プラッツ


 ローマ人が去ったあとは久しく忘れられていたが、1838年にフランス人ジャック・ベナゼがバーデン大公の 許可を取り、豪華絢爛なヨーロッパ最大のカジノを開いて大々的に宣伝を開始した。 ヨーロッパのほぼ中央に位置する好条件も手伝い、国境を越えて多くの人が訪れ、 王侯貴族や上流階級の人々の社交場として多いに賑わった。