ヨーロッパ

 ヨーロッパの温泉の多くは、古代ローマに起源をもつ。温泉好きだった古代ローマ人は、 カラカラ浴場のような壮大な施設をいくつも作った。浴場には温度の違う複数の浴槽やシャワー、 またサウナやマッサージの部屋があり、運動場や散策のための庭、談話室などを備えていた。 人々は、まず運動場で汗を流したあと、浴室を巡る循環入浴で長時間を過ごした。


温泉を利用した集団治療


 ローマ帝国の拡大につれて、ヨーロッパ各地にローマ風の浴場が作られた。 そして中世ともなれば、温泉は庶民の憩いの場となり、入浴は飲食や音曲とならぶ楽しみの ひとつとなった。しかし、混浴による風紀の乱れ、また伝染病の蔓延によって 温泉は次々と閉鎖された。

 近世になると医学が発達し、温泉の治癒力が見直されるにつれて湯治場も復活した。 18世紀になると王侯貴族の湯治旅行が流行し、地方の温泉地は華麗な社交場となった。 19世紀の産業革命以降は市民層が主役となるが、文化人や芸術家も訪れ、湯治場に行くことがステータスの証となった。古くからの温泉地を訪ねると、宮殿のような建物を目にすることがあるが、当時の流行や人々の願望が建築に反映されたものといえよう。

 
古くからある温泉には歴史を感じさせる建物が多い