台湾
 
 台湾は環太平洋造山帯の一部をなし、九州とほぼ同じ面積の国土に3000m級の高山が130もある。現在、温泉は全土でおよそ50ほどあり、山間の未利用のものを加えると100を越えるともいわれる。いずれも高温で湧出量も多く、泉質は硫黄泉、炭酸泉などバラエティに富んでいる。主な温泉地は北部に多いが、台北周辺の北投、陽明山、鳥来、礁渓、中部の谷関、関子嶺、南部の知本、四重渓などが有名である。豊富な温泉資源を利用した開発には政府が積極的で、1999年は「台湾温泉観光年」としてさまざまな事業が行なわれた。温泉ガイドブックも多数発行され、今や温泉ブームといった状況で、日本へも温泉ツアーの観光客が多い。
陽明山の景色を満喫できる露天風呂
 
 日本占領時代、各地に和式の浴場がつくられ、今もその影響が残る。大浴場に併設している家族風呂は、使用ごとに湯を張る個室形式で、順番待ちの行列もできる。一般に脱衣所がなく、浴室内の棚に衣服を置く。屋外の温泉プールや日本風露天風呂も人気があり、こちらは水着着用で利用する。飲料水を持って入場し、昼寝や体操をしながらゆったりと楽しむ人が多い。  最大の温泉地・北投温泉は台北中心部から地下鉄で40分、台北の奥座敷として有名である。1893年にドイツ人が最初のホテルを建設して以来、日本人の経営する旅館や保養所が次々と増え、歓楽温泉街を形成していった。今も残る星乃湯(逸邨大飯店)は畳敷きの和風旅館で、このほかにも「熱海」や「京都」といった当時をしのばせる屋号が残る。1960年代後半にはベトナム戦争で駐留するアメリカ兵や日本からの男性ツアー客が急増したが、79年に公娼制度が廃止され、健全な観光・保養温泉地として再生した。