有馬節を舞う小湯女
大根土成「滑稽有馬温泉紀行」から


 日本国内にはおよそ2,500の温泉地があり、延べ人数に換算すると年間1億4千万人もの利用者がいるという。まさに世界一の温泉大国である。しかも近年、温泉による町おこしの機運も手伝ってか、新しい温泉が次々と発掘され、なかには銭湯感覚で気楽に利用できる施設も急増しており、休日ともなればどこも家族連れで大盛況である。
 どうして日本人は、こんなにも温泉好きなのであろうか。ひとつには、火山の多い国土のいたるところに温泉が湧き出している、という恵まれた自然環境があげられるだろう。また夏の高温多湿や冬の寒さといった気候条件も影響しているだろう。しかしそれだけではない。古来の温泉信仰とともにあった湯治の伝統が、日本人独特の温泉観、温泉文化をつくり出してきたといえるのではないだろうか。