[白神山地]Shiragami Mountain Range | ||||||||
ブナは東アジア、ヨーロッパ、北アメリカに分布するが、純林に近く、しかも面積の大きい森はヨーロッパと日本だけにしか見られない。そのなかでも、秋田・青森県境に広がる「白神山地」は、日本が誇る世界最大級のブナの原生森である。森林を構成する植物、生息する動物の多様性も群を抜いている。 天然記念物に指定されている日本最大のキツツキ「クマゲラ」をはじめ、イヌワシ、ニホンザル、カモシカなどの動物、サンリンソウ、トガクシショウマ、フジチドリなどの植物、その他さまざまな昆虫の宝庫でもある。また、今日注目を集めている遺伝子資源の貯蔵庫(ジーンプール)としても、きわめて重要な価値をもっている。 |
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紅葉の白神山地。 遠景は青森県境の山並み。 |
白神山地は秋田県北西部・青森県境に位置している。最高峰は青森県側の向白神岳(標高1243メートル)であるが、全体に標高1000メートル前後の「白神アルプス」の稜線が連なり、近年までは入山者も少なかった。そのため、800年前とほとんど変わらない良好なブナ林が長 年月保存されてきた。東西40キロ、南北20キロ、約13万ヘクタールの広大な山地である。中心部の1万6971ヘクタールが平成5年(1993)12月、「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」に基づき、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産に登録された。 秋田県側では、藤里町・藤琴地区北部が世界遺産の指定区域に含まれる。同地区にある樹齢400年、幹廻り4.8メートルの大ブナは、白神山地のシンボルとしてすっかり有名になった。また、藤里町に隣接する二ッ井町「ふたつい白神郷土の森」(約189ヘクタール)も、ほぼ全域が樹齢60年から250年の天然林で、ブナ林を体験できる施設が整備され、市民に親しまれている。林業の町として繁栄してきた二ッ井町は、天然秋田杉があまりにも有名であるが、ブナ林の町でもあるのだ。 | |||||||
春間近なブナ林。白神山地で世界遺産に登録されたコア区域はおよそ1万7000ha。秋田県では、この藤里町のブナ原生林が含まれている |
白神山地が全国に知られるようになったのは、環境庁が昭和53年(1978)と54年に実施した「第二回自然環境保全基礎調査」、いわゆる「みどりの国勢調査」からであるが、「世界遺産」に指定される発端は、別にあった。秋田県八森町から青森県西目屋村に至る「青秋林道」の計画、反対運動、そして計画中止という一連の出来事である。「ブナ林とクマゲラを守ろう」というスローガンのもとに展開された、市民による画期的な自然保護運動によって、林道建設はかろうじて阻止されたのである。 世界遺産に指定されたあとも、およそ1万ヘクタールの核心地域(コア)への入山規制問題や、コアを取り巻く緩衝地域(バッファ)の保全・利用に関する問題をめぐって論議が行なわれたが、平成9年(1997)夏、青森県側の27ルートに限り、入山が試験的に認められた。 |
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新緑の藤里町ブナ原生林。北部は青森との県境をなし、 |
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Shiragami Mountain Range is located in Northwest area of Akita Prefecture, and runs along the border between Akita Prefecture and Aomori Prefecture. Few people entered the mountains until recent years, and beech trees have been satisfactorily preserved for a long time. The mountain range is vast with about 130,000 ha and is about 40 km from east to west and 20 km from south to north. In 1993, its central 16,971 ha, was registered as a UNESCO "World Natural Heritage". |
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神 山 地 と 和 賀 山 塊 |
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