Rivers and Festivals


Photo:Gensaku Izumiya

大曲の花火大会。「宇宙への誘い」より(1998年大曲・花火協同組合制作)

しかしその反省からか、80年代の「親水空間」ブーム、90年の「多自然型川づくり」やアウトドアブームによって、再び川が注目を集めるようになった。釣りやキャンプ、ボートにカヌーといった川遊び、また川辺の花火大会も全国的に増え、水辺の楽しさ、心地よさが再認識されてきたのだ。
 川をどのようにするのか、ということはそれぞれの地域の問題であり、とりもなおさずそれは文化の問題である。川に関わる地域の文化を大切にする心が、新しいまちづくり、地域づくりへつながっていくにちがいない。
 地球の表面を覆っている海水は絶えず蒸発し、雲になる。雲は雨になり、雪となって地上に降り注ぎ、やがて川に集まり再び海へと、絶え間ない循環を繰り返す。こうした自然のサイクル のなかで、川はいつもわれわれの身近にあって限りない恩恵を与えてきた。飲用や灌漑用のためだけでなく、時に荒ぶる表情を伴いつつ文化や風土を形成し、深く人間と結びついてきたのである。
 ところが高度経済成長期、近代的な河川工事によって、川はすっかり表情を変えてしまったばかりか、人との関わりも希薄になってしまった。

 During the high-growth period of the Japanese economy, modernized river improvement works were conducted which separated us from waterside. But recently, perhaps because of regret for our weak relations with rivers, more and more people have begun to go to riversides to enjoy fishing, camping, boating, canoeing, fireworks on riverbank and so on. The fun and comfort that can be derived from rivers has been rediscovered. Three traditional events on rivers have long histories and have taken root in people's lives, even with some occasional alterations. A river is not just useful for drinking water and irrigation, but is also quite important in forming a unique culture and for its natural features.


川を渡る「ぼんでん」
Bonden river-crossing

  毎年2月17日、大曲市の伊豆山神社に「ぼんでん」が奉納される。県内には、他にも同様の 行事があるが、なかでも当地のぼんでんは唯一、川を渡るというところが特筆すべき点である。
 この行事は嘉永年間(1848〜53)、花館村の肝煎りであった齋藤勘左衛門によって始めら れたという。五穀豊穣を祈願したものであるが、不安な幕末の世情のなかで、ともすれば怠惰 な生活に陥りがちな若者への活性剤的効果を狙ったものとも言われる。
 ぼんでん、あるいは梵天とは、ヒンドゥー教の最高神ブラフマンのことで、仏教では色界の初禅天の主とされ、大梵天王ともいう。修験道では墓所をあらわし、また祭礼のときに振りながら持つ幣帛・御幣をさす。さらに指物の一種である武具の名になるなど、さまざまに用いられるが、小正月の行事である「ぼんでん」とどのような関わりがあるのか、不明である。

Photo:Gensaku Izumiya  雄物川を渡るぼんでん

 午前8時頃、各町内のぼんでん数十本が町に繰り出し練り歩いたあと、伊豆見橋近くの一の鳥居をくぐり、雄物川の蛭川渡船場に向かう。川船で対岸に渡ると、あとは歩いて山頂の神社 をめざし、社前に至ると先陣を競ってぼんでんを奉納する……。
 一面雪に覆われた厳しい冬の季節、赤、黄、紫といった色とりどりのぼんでんが川面に照り映える情景は、雪国ならではの美しさである。

  This is a lunar New Year event held on February 17 every year. Many decorated giant purification banners with ornaments called 'Bonden' cross the river on boats and are dedicated to a shrine on the top of a mountain. It is quite spectacular to watch red, yellow, purple and other colorful Bondens cross the river backed by a white snowscape. Although there are similar festivals in other towns in Akita, it is only here in Omagari that Bondens cross the river.