泉の上にある町 The
Town above Water Veins
六郷の町を歩けば、いたるところに清水が湧いている。その数や湧水量は定かではないが、かつては「百清水の里」と呼ばれ、100カ所を超える泉があったという。現在確認されているのはその半分くらいというが、ほとんどの清水に名前が付けられていることから、町の人々がいかに大切にしているかを窺い知ることができる。
六郷町は、真昼岳(標高1060メートル)の麓に発達した六郷扇状地の中心に立地している。そしてここには、標高45メートルの等高線に沿って湧泉列がある。市街地が標高40から60メートルに広がっている六郷町は、ちょうど泉の真上に位置していることになる。
歴史的に見ると、六郷は羽州街道沿いの宿場町として仙北郡南部商業圏の中心的位置を占めてきた。特に、佐竹氏の代になってから積極的な町づくりが行なわれ、西国各地から豪農や商人が移住し、屈指の城下町に発展した。良質の水と近隣の米を用いた酒造りも盛んに行なわれ、享保11年(1726)「酒屋仲間寄合」に連なる酒造業者は、半兵衛110石3斗を筆頭に、九助11石まで20軒を数えたという。その伝統はいまも継承され、蔵元も多い。
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