Culture, Faith in Water

Photo:Tadahisa Sakurai  青々と広がる田と鎮守の森は、日本の原風景のひとつ。中仙町の水神社
水板倉と引水

 角館街道沿いの集落として発展してきた仙北郡中仙町に、大変めずらしい建築物がある。水板倉、またはミズイタゲと呼ばれるもので、池の上に建てられた倉庫である。中仙町役場企画開発課の話によると、現存する水板倉は大神成の高貝家だけのようである。明治42年(1909)に建てられたとものというが保存状態は良く、いまも現役として使用されている。平成元年に、中仙町文化財指定を受けた。
 袖倉(倉の入り口手前部分)には、三年分の味噌と漬け物が保存され、二階には衣類箪笥、家具、重要書類などが保管されている。盗難や火災、またネズミの害などから大切なものを守るために、池の上に建てられたものであろう。農家では、籾を保存するさい乾燥しすぎないよう、夏の土用40日間ほどは特に注意を払うものであるが、水板倉では下敷き板を何枚かはずして、涼しい風と適度な湿気を入れることができる。


Photo:Gensaku Izumiya


Photo:Gensaku Izumiya
水板倉外観。
上の写真中、遠景に写るのは高貝家母屋。 藁葺き屋根の伝統的秋田 の農家
 水板倉の規模は、本倉が間口三間、奥行き四間で、二階建て内部は一部吹き抜けとなっている。出入り口には四尺(1.2m)のひさしを張り出し、これが袖倉になっている。窓は、入り口と反対側、妻側の高いところにひとつだけしかない。土台は二重になっており、下は水に強いマツを、水の上はクリを使用している。上下の土台は、ナラの束(つか)と呼ばれる柱で連結している。この束のほぼ半分から下が水中にある。
 水と空気、木材の性質をたくみに生かした水板倉は、農家の長年の経験と智恵から生み出されたすばらしい水の文化である。
 戦前から広い農地や山林を所有していた高貝家は、現在も角馬屋造りの茅葺き屋根の家である。水板倉はこの母屋から東南15メートルほどのところにあるのだが、もうひとつ水に関することで「引水」についてふれておきたい。写真に写っている二本の管は、北側の沢からひいた引水の管である。周辺の地域では、昔はどの家でも沢から引水をして使っていたらしいが、古い高貝家にも、こうした慣習がいまも残っていたのである。

● 藤田秀司「水板倉」(中仙町『町の文化財』)を一部書き改め、「引水」については別に付け 加えました。








Photo:Gensaku Izumiya

水板倉の内部で説明する高貝さん。
内部は整理され、いまでも現役で使われていることが分かる。
右の写真は、沢から高貝家の裏手に延びる引き水用の管