伝統構法へのこだわり

 住宅建設に当たった大工棟梁のひとり、石山勝幸さんは、今回、伝統構法である真壁工法がいちばん大変な仕事であったと語ってくれた。現在主流となっている大壁工法に対し、柱や梁が見える真壁工法はつねに人目にさらされることになり、そのぶん神経を使うのである。また、若い大工さんは伝統工法の経験がないので、技術指導をしながら作業を進めるために時間がかかるのである。


Photo:Tadahisa Sakurai
大工棟梁石山勝幸さん


Photo:Yoshihiko Hakamada
石山さんが手掛けた二世帯住宅の玄関ホール吹き抜け。梁や柱の継ぎ手、仕口といった伝統構法が見事である

 高度に洗練された日本の木造技術を継承していくには、こうして実際に体験を積み重ねていくしか方法はない。しかしこれは、逆の見方をすれば、すべて自前で家を建てることによって、技術の修得や継承ができるというメリットが生じることでもある。
すべてを地場産品で

 建具を制作した桜庭木工は、昭和初期の創業以来、主に天然秋田杉を扱ってきたが、時代とともに外材が多くなり、いまではその割合が90パーセントを越えている。最近になって、造林杉の柾平割材も手掛けるようになった。同社代表の桜庭富男さんによれば、造林杉は乾燥が難しく、クセがあるので長い間敬遠されてきたと言う。しかし、モックネットの運動に参加してからいろいろと研究し、実際に住宅の建具を制作しながら実績を積んできた。今回の町営住宅でも、桜庭さんの手がけた建具が随所に使われ、たいへん好評である。


Photo:Tadahisa Sakurai
桜庭木工代表桜庭富男さん

 建築というもののむずかしさは、たくさんの人たちが協同して事に当たらなければ完成しないという点にあるが、伐採から製材、設計、建築、建具に至るまですべて地元で賄うことにより、 地域活性化につながるという利点があるのだ。
 地場の強味はほかの面でも発揮されている。二ッ井特産ともいえるゼオライトの使用は、その好例と言えよう。ゼオライトとは、「豆腐石」と呼ばれるほど柔らかい、吸湿性に富んだ石のことである。明治時代は鉄道の敷石などに使われた。流し台、土台石、石段、門柱、護岸工事用として、また粉末にして土壌改良材としても使用される。切石地区の石切山は特に大きな採掘場 になっている。
 町営住宅ではポーチの柱の束石(つかいし)として使用したほか、床下に5センチの厚さで敷き詰めた。これにより防湿効果だけでなく、防腐・防蟻処理も不要だという。秋田杉の家にはゼオライトがよく似合っている。


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3DKタイプ住宅の玄関ホールとロフト。桜庭さんは玄関の扉などの建具を手掛けた。玄関や風除室を木製建具にするにさいしては、特別なパッキンなどを使用して気密性を高めた


地域振興をめざして


 「町づくり」という言葉が、70年代後半あたりから「まちづくり」という表記に変化し、今日に至っている。身近な居住環境整備からさらに歩をすすめ、二ッ井の例にみられるように、地域内部からの変革を意図した活動をさすようになったのだ。個性あるまちづくりを推進するためには、ものと人、人と人とが関わりあい、ネットワークを形成することによって可能となってくる。
 町営住宅に対する反響は大きく、完成後は首都圏など全国から視察や見学会の希望も跡を絶たない。こうした状況に対して、設計を担当した「アトリエあすか」代表田中勝昭さんは次のように語ってくれた。
 「地場産業の活性化、職人の技の伝承、エコロジー住宅への追求など、これからの地域循環型住宅と心豊かに住めるまちづくりを提案させてもらった。私たちは永続的な“地球環境”の保全を考え、化石エネルギーを消費しないような方法で、自然の摂理にかなう工法、また長期的なまちづくり計画にも取り組んでいる。これから何が本当に大事なのかを熟考し、ともに行動していきたい」。


Photo:Yoshihiko Hakamada
若い世代向きの4DK住宅。広さは約83平米。四人家族を想定して設計されたもっ とも 広い住宅ということで、ソーラーパネルを設置した。ランニングコストだけでなく、 再利用、再 生利用、自然エネルギー利用に取り組んだ設計となっている

[町営住宅の特徴]

●地場の木材(並材)、ゼオライト、技術を活かした改良型木製建具・木製サッシなどを使用
●世界に冠たる大工職人技、伝統構法の良さを受け継ぎ、文化を育成する
●構法の工夫、材料の選択、自然エネルギーの利用などによるエコロジー住宅の確立
●4タイプの住宅を、それぞれの住み手が豊かさを感じるよう個性的に配列
●まちづくりを考慮し、古材の再利用による東屋建設、杉ブロックの木道敷設、高性能浄化槽 を利用した「ホタル計画」などへの取り組み

 Attention is being given to one housing project, while consumption of Japanese lumber has decreased due to the large volume of imported lumber, and Japanese forests have been devastated because of a lack of care. They are the Futatsui municipal houses, which were completed in 1999. The houses are built using Akita cedar from Futatsui with traditional Japanese construction methods. "Nami-zai", which has knots, is used as the lumber. "Nami-zai" had been avoided because of its bad appearance, but there is no problem with its quality. It is expected that the circulation system of forest can be reborn, devastation of the forests can be prevented, and the forestry town of Futatsui activated by using such lumbers. Carpenters who constructed the houses and artisans who made the furniture were all from Futatsui. The houses receive nationwide attention, and applications to visit poured in.