体によいはずの温泉も、入り方を間違えると悪影響がでたり、事故にもつながる。特に高齢者は適応力が低下し、温度や渇きに鈍感になっているので注意が必要である。

 まず、湯にいきなり入ることはよくない。心臓に負担がかかり、脳貧血をおこす場合がある。体を慣らすために足から上半身へと掛け湯を行ない、入る時もつま先からゆっくりと入ることが必要だ。特に冬場の露天風呂は外気と湯の温度差が激しく、血圧の急激な上昇・下降を招き、極めて危険である。



 また、日本人は一般的に熱い湯を好む傾向があるが、熱い湯に長くつかることは体への負担が大きい。汗をかきすぎると血液粘度が高くなり、血栓ができる危険性があるからだ。ぬるめの湯にゆっくりつかり、汗ばんできたらあがる。それと、入浴時に体にかかる水圧はあなどれないものがある。心臓への負担を軽くするために、みぞおちか、せいぜい乳の下あたりまでつかる半身浴をすすめる。むしろこのほうが、血液が足先から循環して前身にくまなく行き渡り、良く温まる。

 入浴の時間であるが、食後すぐは胃もたれをおこし、空腹時もよくない。早朝は一般に血液粘度が高くなっているため血栓誘発の危険が多く、深酒の後の入浴とともに、温泉地での事故の報告が目につく。また、せっかく温泉に来たのだからと、何度も入りすぎると湯当たりをおこすのでひかえめに。入浴一回につき、浴槽に入るのは3回くらいを目途とするのが良いだろう。いずれにしても一人での入浴は、予期せぬ体の異常に対応できず事故につながるので避けたい。

 最後に湯船から上がったら水分をよく拭き、湯冷めをふせぐ。特に酸性の湯はよく洗い落としておかないと皮膚に刺激が残る。湯上がりのあとはしばらく安静にして、水分の補給を忘れずに行なおう。