玉川温泉は古来より万病に効くとの評判が高かったが、株式会社として設立されたのは昭和18年、八幡平が観光地として注目を浴び始めた頃のことである。鹿角市で湯瀬温泉を経営していた関直右衛門が、自らの皮膚病が完治したことから、ここを本格的に開発することを決意したのだという。現在は、環境省から国民保養温泉地に指定されており、多数の湯治客が全国から訪れる県内有数の温泉として名高い。
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玉川温泉全景 | 雪かきを終えた建物周囲 |
「大噴(おおぶき)」と呼ばれる源泉からは、毎分9,000リットル、摂氏98度の熱湯が轟音とともに噴出し、幅3メートルの川となって流れている。一ヵ所の源泉から湧出するお湯の量としては日本一を誇っている。泉質は世界でもめずらしい塩酸を主成分とした強酸性の温泉で、しかもラジウムを含んでいることから、医学的にもすぐれた効能を持つことが認められている。
 「大噴」と呼ばれる源泉 |
総ヒノキ造りの大浴場には、源泉50パーセントと100パーセントの浴槽のほかに、気泡湯、箱蒸し湯、蒸気湯、打たせ湯、寝湯などがあり、飲泉もできる(ただし15倍くらいにうすめて飲む)。湯治期間は一般に三日ひと巡りと言われ、三巡り(9〜10日)滞在するのが普通であるが、十分な効果をあげるには2、3週間くらいが適当と言われている。しかし、初めての人は自分の身体に合うかどうか、様子を見るとよいだろう。なお、玉川温泉研究会附属診療所には看護師が常駐していて、初めて利用する人の相談にも無料で応じてくれる。
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総ヒノキ造りの大浴場 | 大浴場内にある箱蒸し湯 |
さて、玉川温泉といえば屋外で行なう「岩盤浴」が有名であるが、厳冬期の2月でも盤上に張られたテントのなかで、懸命にリハビリに取り組むたくさんの湯治客を見かけ感銘を受けた。夏期ともなれば、たくさんの人びとが思い思いの場所で横たわる姿が見られる。
 自炊部における食事の準備 |
湯治場というと、食事が質素という先入観があるが、ここ玉川温泉の食事はなかなか豪華だ。観光地のような見た目の派手さや、器に凝るということはないが、健康を重視した新鮮な地元素材をさまざまに工夫して、バイキングスタイルで食べられる。自分の身体の具合、胃腸の状態などを考慮して、自在に選択できるのできわめて合理的である。白米のほかに玄米や麦飯、お粥もあり、至れり尽くせりである。鍋物の中身を好きな素材、好きな量を銘々で盛りつけるというのも、なかなかいいアイディアである。
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