歴史を体感できる豪農の宿
 
 強首(こわくび)温泉は、「あきたこまち」の産地として名高い仙北郡の西方、雄物川がゆったりと蛇行して流れている田園地帯にある。1964年、当時日本一の石油産出量を誇った帝国石油が天然ガスの試掘をしたさいに、ガスではなく温泉が湧出したことをきっかけに開発された比較的新しい温泉だ。
 

樅峰苑の現在の外観

大正6年当時の外観

 この温泉郷から北へ3キロほどのところに、重厚な建築で評判の樅峰苑がある。江戸時代から藩の要職を努め、戦前までは近在の大地主でもあった小山田家が温泉を引き、地域の人に利用してもらおうと屋敷を開放して「ヘルスセンター」をつくったのが始まりで、平成4年に改称したものだ。なんの予備知識もなく宿に着いた人は、まずは壮大でいかにも由緒ありげな豪邸のたたずまいに驚くことだろう。表玄関の屋根は最上部が社寺建築を思わせる千鳥破風、中上部が入母屋造、下部が唐破風という凝った造りである。
 しかしその真価は、外観だけにとどまらない。16.3メートルという長大な天然秋田杉の一枚板の廊下、洋風と桃山風のデザインが混交した明治の開化期を思わせる階段室、柱を抜き取ると四つの広間がたちまち40畳の大広間に変身する仕掛け、当主の居室であった付書院の典雅なしつらいなど、邸内随所に素材のすばらしや技術の高さが見られるのである。
 当主・小山田明さんによると、この建物は大正6年(1917)に完成したものであるが、その3年前に起きた強首地震の被害を教訓とした耐震構造になっているという。そのため当時の12代目当主が、棟梁を京都へ派遣して耐震構造を学ばせている。


 
和洋が混在した階段室

 
一枚板の廊下
 浴室は近年改装されたもので、こぶりであるが御影石のこぎれいな風呂である。湯に鉄分があるため、少し茶色をしているが、よく温まる。風呂から上がると、シェフをつとめる若おかみが腕によりをかけた料理が待っている。雄物川でとれた川ガニや鴨鍋、鮎の塩焼き、旬の野菜など地元の素材を生かした手料理を満喫できる。



地元の食材を使った
自慢の料理

佐竹公が愛用した
弁当箱と茶道具

シンプルで落ち着いた浴室  




 

[泉質]
ナトリウム塩化物泉、47℃

[適応症]
リウマチ、神経痛、創傷、やけど、皮膚病など



右から館主の小山田さん  
お母さん、奥さん  

[樅峰苑]

〒019−2335 秋田県仙北郡西仙北町強首268
TEL0187−77−2116 FAX0187−77−2117 

料金=10,000円〜12,000円(2食付)
外来入浴=400円 10時00分〜16時00分
館内参観料=200円


 

[交通]
秋田空港よりタクシーで25分、奥羽本線峰吉川駅より同6分。マイクロバス送迎あり