おかみの人柄が伝わる宿
 県北では大湯温泉と並んで古い温泉地である。町の中心地にある薬師神社の脇にはいまでも元湯がこんこんと湧き出しているが、かたわらに掲げられた温泉由来記によると、大同2年(1467)に八幡平焼山の噴火によって湯が湧出したと記されている。また当時は、「鶴の湯」と「芒(すすき)ノ湯」というふたつの湯元があったという。享保15年(1730)に書かれた『六郡郡邑記』には、「大滝村二二軒温湯あり」という記述も見え、かなりの賑わいをみせていたと思われる。また菅江真澄は享和3年(1803)の正月を大滝で迎え、『すすきの出湯(いでゆ)』を書き残している。
 
 
客室から見た米代川の眺望
 
大滝温泉にある薬師神社と元湯
 
 当地は、十和田湖や八幡平の中間に位置し、観光拠点とし大変便利である。また、周辺には鉱山の歴史が体験できる「マインランド尾去沢」や、明治時代に建てられた「北鹿ハリストス教会」など見所もある。市の温泉蘇生事業の一環で、近年、水着で遊べる温泉保養施設「湯夢湯夢の里」ができるなど、かつての佐竹藩御殿湯も変貌を模索しているようだ。
 最盛期には21軒の旅館があったが、現在引き湯している宿は9軒である。そのひとつホテル仙波を訪ねてみた。創業80年の宿は華美な装飾を排したごく普通の宿であるが、おかみである三上栄子さんのこころづくしのサービスがすべてを十二分にカヴァーしている。そのためか、圧倒的に常連客が多いという。料理はおかみ自ら調理するが、キリタンポをはじめとする鍋料理のほか、ハタハタの味噌田楽、鮎の塩焼き、自家製なた漬けなどの「じゃんご料理」(田舎料理)が得意ですと、屈託無く話してくれた。
 

 
ホテル仙波の男子用浴場   米代川を望む客室

 
 肌にやさしい湯は適温で、浴後も心地よい。大浴場のある大ホテルとは違った落ち着きと、きめ細かいもてなしを望む人には打ってつけの宿と言えよう。
 



 
ホテル仙波のおかみ・三上栄子さん   ホテル仙波の玄関正面
[泉質]
弱食塩泉、無色透明、42℃

[適応症]
手術後の傷治療、婦人病、リウマチ、神経痛など
 
[ホテル仙波]

〒018−56 大館市十二所桑原1
TEL0186−52−3508  

料金=8,000円〜13,000円(2食付)
外来入浴=300円 随時



[交通]
東北新幹線盛岡駅から花輪線快速に乗り換え、大滝温泉下車。宿へは徒歩7分
[問い合わせ]
大館市産業部観光物産課 TEL0186−49−3111