日本酒の人気回復をめざして
秋田県酒造組合の取り組み

●東北6県の日本酒消費量
 仙台国税局の統計(平成15年度)によると、東北6県における酒類消費数量は約72万キロリットルで、前年度に比べて2.4パーセント減少した。酒類別の消費量率を見ると、ビールが全体の38.9パーセント、発泡酒が25.3パーセント、清酒は12.3パーセント、焼酎11.2パーセントの順になっている。
 日本全体で見ても、日本酒の消費量は年々減少し、ピークであった昭和48年の約176万キロリットルを境に減少を続け、近年では当時の半分近くに減っている。特にバブル崩壊後は、その傾向が一段と加速した。
●なぜ日本酒離れが起こったのか
 日本酒離れの原因としては、まず食生活の洋風化がある。洋食にあわせてビールを飲む家庭が増え、食卓に日本酒がのぼらなくなってきたことや、冠婚葬祭や懇親会などでも、日本酒を酌み交わす機会は減っている。
 近頃では酒の種類が増え、選択肢が広がったことも影響している。ワインや焼酎、発泡酒などに押され、日本酒を選ぶ人が減っていることも事実である。また、成人になって最初に口にする酒が日本酒だった世代が高齢化し、飲酒量が減ったことも原因の一つであろう。若い人たちはブームに左右されて、いろいろな酒を飲むことも挙げられよう。
●きき酒会での手応え
 平成17年1月26日、東京・飯田橋のホテルグランドパレスで「美酒王国秋田 新春きき酒会」というイベントが開催された。県内の蔵元27社が参加して、秋田の日本酒の復権をアピールしたものである。東京および首都圏の小売店、卸売店、飲食店経営者たち約400人が参加し、大盛況であった。蔵元ごとに展示用のテーブルを設けて来場者に試飲してもらい、各社自慢の銘柄をPRした。
盛況だった「新春きき酒会」の会場
 県酒造組合が業界関係者に対してこのような場を設けたのは、じつに8年ぶりのことであるが、「秋田の酒プロモーション委員会」委員長斎藤雅人さん(飛良泉本舗社長)のお話しによると、「宮城、山形など他県の酒が、地道な取り組みによって首都圏で力をつけてきたのに対し、秋田県は遅れを取っていたが、今回のきき酒会で直接ニーズを収集でき、PRの方向性のヒントを得た」と今後の対策に向けて手応えを感じたようである。
 また、「これまでは問屋さんを中心とする流通に依存していたが、カリスマ酒販店や食と酒に対して高い見識を備えたレストランなどに、どんどんアピールしていくよう、さまざまなイベントを企画し、秋田の底力を知ってもらいたい」と意気込む。
●再び「燗酒」ブームを狙う
美酒王国復活を語る斎藤委員長
 斎藤さんは今後の計画として、首都圏でもう一度「燗酒」ブームを仕掛けたいと語る。燗に合う酒には、ほどよい酸味が必要だが、その点秋田の酒はピッタリで、冷酒に慣れた愛飲家にとって新鮮に感じるのではないかと考えるからだ。きき酒会の会場でも、「秋田の酒に合った飲み方の提案」にもっと工夫がほしいとリクエストされたそうだが、こうした要望に応えようと、さっそく秘策を練っている様子だ。
 また、飲み方だけでなく、食との相性を提案し、秋田の豊かな食材との組み合わせを積極的に提案していきたいと熱っぽく語ってくれた。先日も、秋田市内のあるフレンチレストランで自家の酒を提供したら、即日完売したという。「やりかた次第でまだまだ、日本酒の可能性はあるし、そういうことをふくらませていきたい。また、若い人は日本酒のイロハを知らないから飲まない。これからは、新しい飲み物としての日本酒を知ってもらいたい」とも言う。
●日本酒のワンショットバー
 主都圏のターミナル駅などに、気軽に立ち寄れる日本酒のワンショットバーが出せないものかと、斎藤さんたち蔵元のメンバーは、これまでにも他県の店などを視察して研究してきた。しかし、どこも赤字でなかなか採算は取れない。だから、まずお膝元である秋田駅でできないか、現在研究中とのことであった。秋田を訪れた旅行者が、日本酒の本当の良さに出会える気軽な店があれば、日本酒のためにも、秋田県のためにも、すばらしいことである。PRのあまり得意でない秋田のイメージを拂拭して、美酒王国復活を実現してほしいものである。