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Why good sake comes from Akita?
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酒造りの要諦として必ず挙げられる事柄に、米、水、技術の三つがある。秋田は東北の米どころとして全国に知られているが、水も技術もまた申し分なく、旨い酒の条件はそろっているといえよう。 しかし、旨い酒といっても、何をもって旨い酒であるか、意見の分かれるところである。旨いということをわかるのは自分ひとりが体得すればよいのだが、いざ人に伝えるとなるとさまざまな修飾語がつく。一応、古来から甘・辛・酸・渋・苦の五つの調和にあるというが、渋味や苦味は今日の日本酒にどの程度あるのか不明である。 昭和30年代に「利き酒研究会」がまとめた用語は、日本語のことばというものの豊かさのみが目について、一般の酒好きにとってはどうでもよいことのようにに思われる。 ことばがひとり歩きする前に、まず旨い酒が誕生するには、どのような条件が必要であるかみてみたい。 Three important things when making sake are good rice, good water and superior techniques. Akita Prefecture is known nationwide as a big rice production area. Akita has quality water, and traditional sake brewing techniques have been handed down over generations. |
![]() 秋田の酒はあきたこまち、ササニシキ、キヨニシキ、トヨニシキなどのうるち米が原料となるが、吟醸酒、純米酒などの高級酒には美山錦、吟の精といった酒米を用いる。玄米から精白米にしたあと、周囲を50〜60%も削ってしまうのだから、形が整った大粒のものがよい。 山田錦、亀の尾などといった全国的に有名な酒米があるが、上記の秋田でよく用いられる酒米もこれに勝るとも劣らない。また、ごく最近、東北電力(株)研究開発センターが中心となって誕生したニューフェース「星あかり」にはぜひ注目したい。 Rice for making sake, sakamai, is different from the rice of our principle food. Good sakamai has large grains and the fine shape. Rice for making high grade sake is polished to 50% - 60% of its original size before being used. In the rice production area of Akita, savory rice is grown for sake. |
[2]良水 Water 秋田県は米代川、雄物川、子吉川といった河川があり、その支流を含めると広範囲な水源が広がっている。 世界には、さまざまな酒があるが、なかでも日本酒はとくに厳しく水を選ぶといわれる。ここで留意すべきは、酒にとって良い水と、一般に飲料にする水が100%同じであるかというと、これはすこし違う。名水百選などに選ばれる水は大半が軟水で、飲用すれば旨い。しかし中程度の硬水(硬水度50〜250)、軽度の硬水(100〜150)が酒造りには適している。 秋田の水は鉄分も少なく、湯沢、仙北郡六郷町、秋田市新屋など酒造りによい水が湧出している。 Various liquors are made in the world. Of these, Japanese sake needs especially good water. |
[3]伝統技術 Traditional technique![]() 酒造りといえば、まっ先に杜氏(とじ)の優劣が決め手となる。秋田県には、一部に南部の杜氏や山形の杜氏も酒造りに従事しているが、大部分は平鹿郡山内村出身の山内(さんない)杜氏が中心となっている。出身はほとんどが米作農家であるため、米についての知識は豊富である。温和で粘り強い性質は、ハードな酒造りに適している。 なお、山内杜氏は卓越する技術の保持者として「現代の名工」に認定されている。 For sake brewing, a group of experts, with a touji (brewmaster) leading them, has the knowledge of important traditional techniques. In Akita, a long-standing professional group, called San-nai Touji from Sannai-mura (mura means village in Japanese), has the required knowledge. They support sake brewing in many sake breweries in Akita. [4]秋田流低温発酵 Low temperature fermentation 先に、旨い酒造りの三つの条件をみたが、この他にもいくつか挙げてみる。 大規模で機械化された蔵元は通年で醸造しているところもあるが、ふつうは11月頃になると酒造りの準備が開始され、12月から翌年の2月にかけてが最盛期となる。この時期を「寒冷降雪期」といい、酒の旨さの鍵をにぎる。降雪によって空気がきれいになり、雪ですっぽり包み込まれた酒蔵は、室温がほどよく保たれ、酒の熟成にとっては好条件となる。 秋田の、こうした気候条件を考慮して開発された方法が「秋田流低温発酵」である。仕込みから発酵まで、じっくり時間をかけることで、ふくらみのある、きめ細かい味わいがうまれるのである。 Large scale, mechanized sake breweries make sake throughout the year, but ordinary sake breweries make sake only during the coldest season from December to February. Akita has a lot of snow and they make sake, taking time with low temperature fermentation. This is one of keys for producing savory sake. |
![]() 酒造りが科学的に解明されるまでは、もっぱら杜氏を頂点とする技術集団の経験と勘が頼りであったが、近代になり、すこしずつ細菌、酵母、カビといった微生物や酵素などの働きによって酒(醤油、味噌、納豆、チーズなども)が造りだされるプロセスや仕組みがわかるようになった。 今日の酒造技術の開発研究は、こうしたバイオテクノロジーの研究なくしては考えられない。古くは、「協会六号」の名で日本醸造協会から発売された「新政酵母」がよく知られているが、近年、秋田県醸造試験場(現在、秋田県総合食品研究所)が開発した吟醸酒向け酵母「AK-1」は、「秋田流・花酵母」と命名され、これを用いた秋田の酒が次々と受賞や高評価を得、新政酵母と並ぶほどの人気である。 そして現在、それに続く「45-1」「68-1」といった新酵母も登場した。これらはまろやかな味と香をもたらし、純米酒本醸造酒以外にも使える幅の広さだ。 Originally, microorganisms and yeasts were used for sake brewing, but good sake is now made from the results of advanced research and development. In Akita, very high-grade sake is produced by the highly valued sake yeast "AK-1" which was developed at the Akita Research Institute of Food and Brewing (ARIF). |